1/8 半導体レーザ開発と事業化の思い出 伊藤國雄
加納先生とは会社時代、半導体レーザの開発と事業化で苦楽を共にした仲間というイメージが今でも残っています。もちろん加納先生は私の直属の上司であり、仲間というには失礼に当たりますが、二人とも本当になりふり構わず真剣にレーザの事業化に取り組みました。加納先生からは「企業における研究開発は、最終的に商品化されなければ単なる自己満足に過ぎない。」と常に発破をかけられました。私は入社以来レーザの研究開発を続けていましたが、それを事業化するに当たり事業部の経験をされていた加納先生の叱咤激励のおかげで、紆余曲折はありましたが最終的には工場移管も実現し、35年経った現在も光ディスク用光源として順調に生産を続けております。先日も会社時代の後輩たちと新年会を開催してレーザの現状を聞きましたが、高出力2波長レーザは世界でもトップのシェアを維持しているということです。また加納先生と35年前に商品化した低出力レーザもCD用としてまだ生産されていると聞いて当時のことが走馬灯のように思い出されました。このレーザの研究・開発・事業化の一連の成功が加納先生の提唱された「起業工学」の一例ではないかと思っています。
現在もいくつかの大学で、加納先生が書かれた「起業工学」の本の中の文章を引用させていただきながら、私の会社時代のすべてである「半導体レーザの研究・開発・事業化」の講演をしております。
加納先生の提唱された起業工学の実践者がますます輩出されることをお祈りしております。