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6/7 ウイズ・コロナ;求められるのは“レジリエンス”   This novel coronavirus gripping the world today has revealed many issues that humanity faces in social, economic, and scientific spheres that demand serious attention

今回の新型コロナ感染症は、現代の社会・経済・科学あらゆる面で人類が直面する課題に対する深い考察が必要であることを教えてくれてました。レジェリエンス(resilience・復活力)という言葉は、本当に崩壊したすべての中から立ち上がるという意味で、日本の戦後からの復活という単純な意味だけではなく、もっと基本にたち返って、地球上の人類すべてが人間として生存を続けていくためにはどうあるべきかということを深く考え直すことを意味しています。過去を復元していく事ではなく、新しい人間としての秩序を創りだしていくための変革が必要だということを教えてくれています。ソーシアル・ディスタンシング(社会距離、または、物理的人間間距離)という他の動物では持てない人間として基本的な要素を取り入れた新しい秩序をつくりだし、それを原点として、ニュー・ノーマル(新しい標準となる様式)をつくりだす変革(ディープ・イノベーション)を実践していくことが必要だと言ってくれています。ありがたくこのメッセージを受け取りたいと思います。
1昨年(2018年)に上梓した著書『ディープ・イノベーション:─起業工学が開く人類の新たな地平─』(加納剛太編、カルロス・アラウジョ、 古池進、椎橋章夫著; 冨山房インターナショナル)にこの考え方が提起されています、あわせて紹介させていただきます。
This novel coronavirus gripping the world today has revealed many issues that humanity faces in social, economic, and scientific spheres that demand serious attention. Resilience, a term that describes the ability to bounce back from defeat or a significant loss, has been applied to the national character of Japan that allowed the country to rebuild and prosper following the second world war. In the world today, I fear that we may need resilience on a much broader scale—as a species—if humanity is to survive on this planet into the future. Resilience suggests that we are able to discover and reformulate the questions to ask that will lead to the most effective solutions. That rethink is what we need.
The requirement of social distancing (which includes physical distancing) to avoid viral contagion has furnished a new imperative for the social order of human systems. It requires that we establish new modes of interaction that do not exist in the worlds of other animals. This unique situation demands a reordering of human interaction and beckons for deep innovation, of which basic concept has been discussed in our previous book published in 2018 for the first time (Carlos Paz de Araujo, Susumu Koike, Akio Shibashi edited by Gota Kano). The coronavirus has brought to light issues that I feel we must confront candidly in an effort to forge a constructive, new way forward.
求められるのは“レジリエンス” ウィズコロナの世界経済は | NHKニュース
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求められるのは“レジリエンス” ウィズコロナの世界経済は | NHKニュース
【NHK】“ウィズコロナ時代”世界的な経済学者のことばから考えます。
求められるのは“レジリエンス” ウィズコロナの世界経済は | NHKニュー

暗いトンネルの先にどんな世界が待っているのか。ノーベル経済学賞の受賞者ら3人が口をそろえるのは「元に戻ることはない」。そのうえで“ウィズコロナ時代”に求められるのは、“レジリエンス”だと3人とも言います。それってどういうこと?ジョセフ・スティグリッツ氏、ローレンス・サマーズ氏、それにマイロン・ショールズのことばから考えます。(経済部デスク 飯田香織)

コロナ危機が突きつけたもの

コロナ危機が突きつけたもの
米コロンビア大学 ジョセフ・スティグリッツ教授
長く経済格差の是正を訴えてきた米コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授。世界最大の経済大国アメリカのうちに潜む不平等の問題に早くから光を当て、社会正義の実現に向けて提言してきました。アメリカの経済政策の運営にも携わり、2001年にはノーベル経済学賞を受賞した教授は、「経済が元の状態に戻ることはない」と断言します。
スティグリッツ教授
「多くの人たちが感染するかもしれないと思って、旅行はもちろん、買い物に行くのも仕事に行くのも怖がっている。その結果、需要と供給が同時に大規模なショックを受けるというかつてない事態となった。しかもグローバル化したがゆえに、程度の差こそあれ世界全体に一気にショックが広がったのだ。今後も先行き不透明感は続き、われわれはあたかも二日酔いのように、常にパンデミックを意識することになるだろう」
「新型コロナウイルスの感染が広がり始めたころ、多くの人たちが政府の景気対策で何とか持ちこたえれば経済はV字回復すると期待していた。2、3か月間、経済活動を停止さえすれば、その後は短期間で元のところに戻ると思っていた。それは希望的観測に過ぎなかった。アメリカでは外出制限が長期化し、小売業の破綻が相次いだ。これまで私も飛行機に乗って人に会いに各地に出かけたが、オンライン会議で十分だと気付いた。パンデミックによってこれまでの構造転換は加速するだろう」

露呈した“健康格差”とは

露呈した“健康格差”とは
2011年秋、アメリカで「オキュパイ・ウォールストリート」という抗議活動が広がりました。失業率の高さなどに不満を持つ若者らがウォール街に集結。スティグリッツ教授も若者とともに「不平等の現状を変えよう」と訴えました。世界各地を飛び回ってきた“行動する経済学者”はコロナ危機が社会の弱点を突き、経済格差と同時に健康格差も露呈したと指摘します。
スティグリッツ教授
「新型コロナウイルスはとりわけ貧困層の間で広がった。労働者が病気になっても休業手当を受け取れない事態も浮き彫りになった。アメリカ型の資本主義の弱点が鮮明になり、それを世界にさらすことになったのだ。コロナ危機をきっかけに不平等の是正にこれまで以上に取り組まないといけない」
「このあと心配なのはパンデミックが新興国や途上国に広がることだ。狭い住居で暮らし、医療体制が十分でないなど感染の温床になりかねず、アメリカ以上に準備不足だ。さらに経済が悪化した時の財政的な余裕がない。そうした国で感染が広がると、先進国の金融機関の無責任な貸し出し姿勢もあって債務危機に陥るおそれもある」

パンクに備えた社会の実現を

さらに、スティグリッツ教授は経済や社会が大きな衝撃を受けてもそこから立ち上がる力=“レジリエンス”が必要だと強調します。
スティグリッツ教授
「われわれは2008年の金融危機のあとも近視眼的な対応しか取らず、効率重視の道をまっしぐらに進んできた。言ってみれば予備のタイヤがないような車をつくったのだ。そしてタイヤがパンクした時のことなんて考えもしなかった。今回の危機を抜けたあとは今度こそ、次なる危機に備えないといけない。目指すべきは経済危機、感染危機、気候変動がもたらす危機にも立ち向かえるような“レジリエンス”のある経済と社会だ」

ジャスト・イン・ケースの発想を

ジャスト・イン・ケースの発想を
ローレンス・サマーズ 米ハーバード大学教授
クリントン政権の財務長官だった当時、アメリカ型資本主義に自信満々な態度で日本に経済立て直しや規制緩和を強く求めたのがローレンス・サマーズ米ハーバード大学教授。コロナ危機は資本主義の抜本的な見直しを迫っていると言います。
サマーズ教授
「アフターコロナの世界では、出張は減って会議はオンラインで行い、職場に通わず在宅勤務が増えるだろう。個人、企業、社会のいずれもショックに対する“レジリエンス”が問われる。効率を重視して必要なものを必要なだけ、必要な時に調達する“ジャスト・イン・タイム”的な手法から、いざという時に備えて在庫や予備のキャパシティーを用意する“ジャスト・イン・ケース”に軸足を移さざるを得なくなる。あらゆる企業が戦略の見直しを迫られる」
「世界的に張り巡らせたグローバル・サプライチェーンは今後、グローバルでなくなるだろう。グローバル・サプライチェーンのよさというのはその効率性にあったが、今後はそれが効果を発揮しないからだ。これだけアメリカと中国の対立が深まると、各国の企業はグローバルに供給網を展開するよりも、国内回帰を好むだろう」

“情け容赦ない資本主義”からの転換

サマーズ元財務長官は、新型コロナウイルスの感染拡大が公衆衛生と世界経済の両方を脅かしていて、企業もその影響から逃れられないと指摘します。
サマーズ教授
「企業が従業員を大事にし、地域社会に投資するよう、社会は企業に圧力をかけるだろう。投資家のことだけを考えればよいというのは時代遅れだ。近年のアングロサクソン的な情け容赦なく冷徹な資本主義から新たな形への転換につながるだろう」
「コロナ危機は20世紀に起きたどの出来事よりも大きな変化をアメリカにもたらすだろう。半年前に都市封鎖なんて全く考えられなかった。数年かかると思われたIT技術の活用が一気に進んだ。また、冷戦後のどの出来事よりも国と国の関係に変化を起こすだろう。パンデミックは、国際協力が必要だというウェイクアップコール=警鐘の役割を果たすと願っている。今後、テロ、気候変動、金融危機の対策であれ、感染抑止であれ、国家間の対立ではなく国際協調で乗り切るべきなのだ」

トイレ休憩は必要ない?

トイレ休憩は必要ない?
マイロン・ショールズ 米スタンフォード大学教授
コロナ危機はこれまでの流れを推し進める“加速器”になると主張するのは、1997年のノーベル経済学賞受賞者のマイロン・ショールズ米スタンフォード大学教授。
ショールズ教授
「パンデミックをきっかけに生産現場によるロボット導入が劇的に加速するだろう。現場で2メートルの社会的距離を保つのは無理だ。すると、人間・ロボット・ロボット・人間といった具合に人と人の間にロボットを挟んで作業することになるだろう。ロボットはトイレ休憩も帰宅もする必要がなく何時間でも働く」
「ショックが起きた時にもっとも大事なのは“レジリエンス”だ。ショックに対して生き残れるかどうかは立ち上がる力こそが問われる。コロナ危機をきっかけにこれまで考えていなかったような形で経済も社会も変わるだろう。実現までに何年もかかると思っていた変革が一気に加速する」

ウィズコロナの時代

ウィズコロナの時代
いま求められるのは、“レジリエンス”だと3人とも全く同じ表現で語りました。元の位置に戻れるわけではないが、いったん打ちのめされても、ぱんぱんとほこりを払ってとにもかくにも起き上がるだけの底力を備えよ、というわけです。そのためには「ジャスト・イン・ケース」の事態に備えて「予備のタイヤ」を用意することが重要だと強調しました。効率化を優先した経済活動や経済格差の拡大。コロナ危機をきっかけに目をそらすことができなくなったのだと感じます。ウィズコロナの時代に、私たちの“レジリエンス”が試されています。
ジョセフ・スティグリッツ(77)
米コロンビア大学教授。クリントン政権の大統領経済諮問委員会の委員長を経て、世界銀行のチーフエコノミスト。2001年に情報の非対称性に関連してノーベル経済学賞を受賞。
ローレンス・サマーズ(65)
米ハーバード大学教授。クリントン政権の財務長官。ハーバード大学の学長を経て、オバマ政権の国家経済会議委員長。
マイロン・ショールズ(78)
米スタンフォード大学教授。株式オプションの理論価格を算出する「ブラック・ショールズ方程式」の構築により、1997年にノーベル経済学賞を受賞。
※3人のインタビューは5月24日のNHKスペシャル「苦境の世界経済 日本再建の道は ”ウィズコロナ時代”をどう生き抜く」で放送されました。
経済部デスク
飯田 香織
1992年入局
京都放送局、ワシントン支局、ロサンゼルス支局などを経て現職